PROFILE
1980年代より開始した『Bachelors』『1000river』などのバンド活動を経て、突如、フランス和声学の研究に没頭し国立音楽大学作曲学科に入学し作風の幅を広げる。2001年ストリングスユニット『LPchep3』を結成し、その他多くのアーチストの弦アレンジも行う。
その頃から作曲家としてゲームの音楽やCMなどを手がけ、映像音楽の道へと進んでいく。主な代表作は、映画・ドラマでは、山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』『超能力研究部の3人』『ぼくのおじさん』、前田弘二監督の『婚前特急』『わたしのハワイの歩きかた』『夫婦フーフー日記』『セーラー服と機関銃-卒業-』、吉田康弘監督の『旅立ちの島唄〜十五の春〜』『江ノ島プリズム』『バースデーカード』、塩田明彦監督の『スパイ特区』『昼も夜も』『風に濡れた女』、小林聖太郎監督と『煙霞』『破門 ふたりのヤクビョーガミ』など、その他の仕事では『宮崎駿デザインの日テレ大時計』や、ゲームでは『デモンズソウル』など。
INTERVIEW
きだしゅんすけは映画に尽くす。己よりもまず作品を優先する。変更の依頼にも素直に応え、全ての時間を投入して修正、調整に没入する。献身とさえいってもいい。
「リテイクを出されているという感覚がまずないんです。監督と一緒に正しい音楽を探究しているという感じがありますね。とにかく監督が何を考えているのかを知りたい。その果てに、映画が生き物のように動き出す瞬間がたまらなく楽しいんです」
そう語るきだの出発点は、熱心にテレビドラマを見ていた幼少期にある。松田優作主演の『探偵物語』(1979年)、萩原健一、水谷豊主演の『傷だらけの天使』(1974-1975年)、中村雅俊主演の『ゆうひが丘の総理大臣』(1978-1979年)などといった作品を繰り返し見た。外国映画では『天国から来たチャンピオン』(1978年)、『タイタンの戦い』(1981年)を好んでビデオで見直した。「今、編集フィルムを繰り返し見るのが苦じゃないのは、そんな経験のせいかもしれない」と、きだは微笑む。とはいえ、それがそのまま映像音楽への興味につながったわけではない。高校時代に自主映画を手がけたときも、音楽担当ではなく、製作をやっていたという。ロック研究部の部長としては、部費の請求を迫って、現Corneliusの小山田圭吾を追いかけ回していたという逸話も持っている。
高校卒業後は進学をせず、バンド活動に勤しむも、程なく頓挫。作曲が好きだったため、「1年間、毎日曲を作ることができたら、その道に進もう」と決め、その目標の達成と共に、20歳にしてピアノを学び始める。やがてフランス和声学にのめり込み、26歳で国立音楽大学作曲学科に入学。同大学在学中に、三谷幸喜脚本のテレビドラマ『竜馬におまかせ!』(1996年)の現場で演奏指導や歌曲の編曲を担当し、出演者の内藤剛志、相島一之に発破をかけられたことで、作曲家としての活動を開始。テレビ局、ゲーム会社で仕事を請け負うようになった。きだいわく「夢を作っている感覚があって楽しかった」というテレビドラマの仕事だったが、きだの映像音楽熱はまだそれほどではなかった。
きだの意識が変わったのは2007年頃、CMで山下敦弘監督(『マイ・バック・ページ』『苦役列車』『もらとりあむタマ子』)と仕事を共にしてから。何度も出される直しの要求に必死になって応えた結果、ついに映像音楽の面白さを知ることになった。
「それまでは音楽を映画の飾りのように考えていたんです。そうではなく、役者さんや風景と同じ立ち位置で存在するものでいいんだということを山下さんに教わりました。スタッフというよりも、演者として、もっと自由でいいんだと。もっとパッションを持ち込んでいいんだと。僕の中で音楽と映像がやっとつながってきた感じがありました」
30代以降、旅に出て、その地で譜面を書くことが趣味になっている。「そうすると、自分っぽくなく新鮮な曲ができるんです。それが高じて、映画のロケ現場に出かけて譜面を書くようになったんですが、そこで生まれた曲が採用になることが多くなりました。撮影現場にはスタッフや出演者の皆さんのいろんな気が飛んでいますからね。それが刺激になって、独特の曲が書けたりするのだと思います。楽しいですね」作品に息吹を与えられる仕上げの作業にやりがいを感じるという。
昔は苦手だったミュージカル作品も面白く見られるようになり、ロマン派のクラシック音楽もたしなむようになった。映画音楽の作曲家では『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年)、『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(2014年)のアレクサンドル・デスプラ、『マグノリア』(1999年)、『俺たちステップ・ブラザース 義兄弟』(2008年)のジョン・ブライオンがお気に入り。その好みに正しく、どちらかといえば小編成の楽曲にきだの個性はよく発揮されているだろうか。一方で、最近はイギリスのポップスチャートを眺めながら、若いマイナー系バンドの動向も気にしているとか。
映像の仕事への深い愛着と幅広い音楽嗜好、そして穏やかで忍耐強い性分。どこかで常に人肌の温もりをたたえているあたりも、きだ音楽の身上だろう。
文責 カクタクト








映画『風に濡れた女』(2016年)
ロカルノ国際映画祭で若手審査員賞受賞。
https://natalie.mu/eiga/news/198136
監督:塩田明彦 主演:間宮夕貴 永岡佑
音楽担当










ネスレシアター on YouTube『昼も夜も』(2014年)
監督:塩田明彦 主演:瀬戸康史
音楽担当




日中合作ドラマ『午夜計程車2(真夜中のタクシー2)』(2015年)
監督:萩生田宏治
音楽担当








LISMO『婚前特急-結婚まであと117日-』(2011年)
監督:前田弘二 主演:吉高由里子
音楽担当

LISMO『婚前特急-ジンセイやっぱ21から-』(2011年)
監督:前田弘二 主演:吉高由里子
音楽担当

KEEPING WALKING THEATRE『約束』(2011年)
監督:塩田明彦 主演:松浦裕也
音楽担当




LISMO『恋ばな -スイカと絆創膏-』(2009年)
監督:萩生田宏治 主演:仲里依紗
音楽担当






角川文庫『夏の100冊』(2008年)
監督:山下敦弘 主演:松山ケンイチ
音楽担当

テレビ信州『開局20周年記念』春編、秋編(1999年)
作画:わたせせいぞう
音楽担当

KONAMI『ノスタルジア』(2017年)
「変わりゆく時間とノスタルジアと」作詞・作曲担当

NBGI『たまごっちリズム TamaRiz』(2012年)
音楽担当















KONAMI『ポップンミュージック9』(2002年)
CHILDREN POP「twinkle song」作曲担当
COSSAK「ロシアのお土産」作詞(日本語原詞)・作曲担当
MODS「Love And Zest」作詞・作曲担当

KONAMI『ポップンミュージック8』(2002年)
PIANO ROCK「マリンドライブ」作曲担当
PIRAMID「永遠という名の媚薬」作曲担当
PSYCHE「L.A.N.」作詞・作曲担当

KONAMI『ポップンミュージック7』(2001年)
SURF ROCK「純愛サレンダー」作詞・作曲担当
KYOUGEKI「加油!元気猿!」作詞(日本語原詞)・作曲担当
GLAM ROCK『スペース★キッス』作詞・作曲担当

KONAMI『ポップンミュージック6』(2001年)
NEW ROMANTIC「Spell on me〜魅惑の呪文」作詞・作曲担当
COUNTRY「Over the Hill」作詞・作曲担当
ROCK’N’ROLL「I am Rock'n'roll King」作詞・作曲担当


KONAMI『ポップンステージ』(1999年)
GIRLS POP「Picnic」作曲担当
80’s POP「Girl from the Portrait」作曲担当
TROPICAL「beAchest beach」作詞・作曲担当




Little Lounge*Little Twinkle『hvit』(2012年)
全11曲

Little Lounge*Little Twinkle『stitch』(2010年)
全9曲




ひとマルシェ パフォーマンス公演『nomad note dance』(2017年)
at神戸アートヴィレッジセンター
音楽担当















櫛引彩香『essential』(2002年)
Track.2「Cycle」ストリングスアレンジ担当
Track.4「Brand-new me.Brand-new morning」ストリングスアレンジ担当



カジヒデキ『From Cafe Scandinavia With Love for cafe apress-midi』(2001年)
Track.14「LIFE IN THE NORTHERN CITY」ストリングスアレンジ担当



思考動物ライブ『10min Happiness』(2014年)
作・演出:前島のの at RAFT
音楽担当

一人芝居『藪の中』(2013年)
プロデュース:駒塚由依 at鷄由宇
音楽担当

アクトBーGUN公演『ZERO』(2001年)
演出:浦山忠典 at東京芸術劇場小ホール
音楽担当

Rennessプロデュース公演『花が咲いたら』(2000年)
作・演出:比佐連
音楽担当

アクトBーGUN公演『ひまわり』(2000年)
演出:浦山忠典 at東京芸術劇場小ホール
音楽担当

マクラバスシアター公演『やわらかい草』(2000年)
作・演出:橋爪健一郎 at中目黒ウッディシアター
音楽担当

マクラバスシアター公演『流れゆく雲に』(1999年)
作・演出:橋爪健一郎 at中目黒ウッディシアター
音楽担当

アーバンフォレスト公演『南蛮奇譚〜バーバリアン・オブ・チャイナ』(1999年)
作・演出:穴吹一郎 at下北沢駅前劇場
音楽担当

ハッタリ劇団笑人料理公演『真っ赤なスカーフ』(1998年)
作・演出:穴吹一郎 at下北沢OFF OFFシアタ−
音楽担当

ハッタリ劇団笑人料理公演『カメレオンマシーン』(1998年)
エチュード創作 at下北沢OFF OFFシアタ−
音楽担当

ハッタリ劇団笑人料理公演『桃太郎伝説』(1998年)
作・演出:穴吹一郎 at下北沢駅前劇場
音楽担当

ハッタリ劇団笑人料理公演『WAO』(1998年)
作・演出:穴吹一郎 at下北沢OFF OFFシアタ−
音楽担当

企画ケイエス プロデュース公演『壁の模様』(1998年)
音響、音楽担当

アズベスト館公演『土方巽とともに』再演(1998年)
作・演出:元藤子 at世田谷パブリックシアター
音響、音楽担当

